スチル用レンズでの滑らかズームの試み
ミラーレスタイプのカメラを使用していて不満に感じることの一つが、スチル用ズームレンズを使った撮影時の、ズーム操作のぎこちなさです。そもそも動画用のズームレンズとは設計が違うので如何ともし難いのですが、それでも動きの渋いズームリングで滑らかなズーム操作を試みた悪足掻きの記録です。結果を先に書くとあまり上手くいかなかったので、色々と無駄遣いをしてきた記録でもあります。
INDEX
フォローフォーカスを試す
ズームリングのように回転するものの操作感を軽くする方法として考えられるのが、ギア比を使う方法です。そこでフォローフォーカスという機材を使って、ズームリングの重さを軽減できないか試してみました。使ってみたのは、スモールリグ社製のミニフォローフォーカス F40という製品です。以下のパーツを使っています。

SONY FX30にSIGMA 16-300mmにSmallRigのケージ、ミニフォローフォーカス F40
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操作をしてみると、ズームリングを操作するよりもフォローフォーカスのノブを回す方が僅かに軽く操作できるように感じます。ただし、劇的に軽くなるといったことはありません。恐らく「ミニフォローフォーカス」という商品なこともあって、フォローフォーカスのノブが小型でレンズを直接操作する場合よりも操作部分の直径が小さくなってしまい、ギア比で軽くなった操作感を相殺してしまっているのではと思います。
また、次項で記載するような問題点もありました。
問題点
カメラに取り付けたリグに多用途U-ベース、サポートロッドを装着し、そのロッドにフォローフォーカスを固定したのですが、重いズームリングをフォローフォーカスを介して動かそうとすると、ギアが浮いて噛み合わせが外れてしまいます。サポートロッドの「しなり」など幾つかの原因が考えられるのですが、レンズマウント部分の遊びが最も大きいようです。
バイヨネットマウントの多くは、バネを使ってレンズマウントとボディマウントを締め付けるよう設計されています。そのため、マウント部分に想定されているよりも大きな力がかかると、レンズマウントがボディマウントから僅かに浮いてしまいます。

FX30のマウント部分(オレンジで囲った部分が板バネ)
PLマウントのように固定パーツで締め付けるタイプでは、レンズに力がかかってもマウント部分が浮いてくるということはありません。しかし、バネで締め付けるタイプのマウントでは、フォローフォーカスが重たいズームリングのギアを動かす際の力で、レンズが浮き上がってしまいます。仮にギアが外れるようなことがなくとも、レンズに力がかかるたびにレンズが僅かに浮き上がり、画面が揺れてしまいます。
これでは、そもそもフォローフォーカスとして使った場合にも画面が揺れるのでは?と思われるかもしれません。しかし、これはスチル用高倍率ズームの「重たいズームリング」をフォローフォーカスで回そうとするために起こるもので、操作感の軽いフォーカスリングを回す場合には、こういった影響は殆どありません。
レンズ用三脚座を試す
重い望遠レンズには三脚座というものが付属します。三脚座を使う理由として、レンズを三脚へ取り付ける際のバランスを取りやすくする目的もあるのでしょうが、レンズマウントでは支えきれない重いレンズを直接三脚へ取り付けるのが大きな使用理由だと思います。三脚座に上手くフォローフォーカスを固定することができれば、レンズマウントの遊びの影響を受けずにフォローフォーカスでズームリングを操作することができます。
大型の望遠レンズの場合、レンズ自体に三脚座が付属しています。しかし、それほど大きくないレンズ用にもサードパーティメーカーから三脚座が販売されています。この三脚座にサポートロッドを固定してフォローフォーカスを取り付ければ、レンズマウントが原因となる「遊び」を回避することができます。
私がSIGMA16-300mm用の三脚座を探したのはレンズが発売されたばかりのタイミングだったので、まだこのレンズ用の三脚座は販売されていませんでした。そこで、レンズのマウント近くの直径を測ってみると、iShootというブランドのS24240FEという三脚座が使えそうでした。早速取り寄せて試したのですが、三脚座のリングに取り付けられたクッション素材のために、フォローフォーカスに遊びが出てしまうといった結果でした。これでは、レンズマウントを介さずにフォローフォーカスを固定した意味がありません。
iShoot S24240FEのAmazon商品リンクはこちらです。

三脚座を使ってフォローフォーカスを取り付け

横から

下から

三脚座とロッドクランプ、15mmロッド

三脚座 iShoot S24240FE 単体

ロッドクランプはミニフォローフォーカスF40に付属のもの
なお、現在はSIGMA16-300mm用の三脚座が販売されています。専用のものを使えば、或いは若干結果がよくなるかもしれません。iShootのSIGMA 16-300mm用三脚座SM1630のAmazon商品リンクはこちらです。
フォローフォーカスを使ったズーム操作は中止
実際に動きの重いズームリングをフォローフォーカスで操作した感想としては、仮にギアが外れず安定して操作できたとしても、写真用の高倍率ズームに独特なズームリングの重さのムラに対応するのは難しいように感じました。こういった重さのムラを回避する方法の一つとして、電動のフォローフォーカスを使ってみてはとも思います。しかし、まずはレンズに対して遊びのない形でフォローフォーカスを固定し、ギアが浮いてしまう問題を解決する必要があります。
なお、ここで試したのは最初に購入したSIGMA 16-300mmで、追加購入したSIGMA 16-300mmは比較的ズームリングが軽く、フォローフォーカスのギアが浮くといった問題は起こりませんでした。「問題解決」とも言えますが、そもそもある程度滑らかに操作できるズームリングであれば、こういった「姑息な」手段を講じる必要はありません。
また、フォローフォーカスを使ったズームリング操作に期待した効果として、ズーム操作を滑らかにすることに加えて、ズームしているかどうか分からない程スローなズーム操作を(滑らかに)行いたいという希望もありました。「ズームしているかどうか分からない程スローなズーム操作」をどういった場合に使うかというと、カメラ1台での催し収録の際の「時間稼ぎ」的な用途です。
カメラ1台で収録していると、ズームで寄って(望遠にして)パンしてズームで引いて(広角にして)といった操作のバリエーションしかありません。しかし、この操作を繰り返すのも馬鹿の一つ覚えのようで格好悪いものです。パン、ズームといった動作の繰り返しを避ける方法の一つとして、各操作をゆっくりと行い「時間稼ぎ」をするという方法が考えられます。しかし、今年の春にカメラを買い足して2台での収録が可能になったのでカット割りである程度のバリエーション変化を作ることができるようになり、無駄な「時間稼ぎ」をする必要が無くなりました。その結果、フォローフォーカスを使った超スローズームに挑戦する必要もなくなったわけです。
ズームレバーを試す
現在使っているSIGMAの16-300mmのズームリングの操作感が比較的軽いとはいえ、あともう一息操作が軽ければという欲もあり、その後試してみたのがズームレバーです。
ムービー用のレンズには、標準的な装備品としてズームレバーが付属する製品が多くありました。元々滑らかに操作できるよう作り込まれたズームレンズであれば、ズームレバーを使わなくとも十分にスムーズなズームができるので、私はこれまでズームレバーを積極的に使うことはありませんでした。
しかし、ズームレバーは元祖滑らかズームのための工夫パーツです。スチル用のレンズに取り付けてみてはどうかと試してみたのが、「Yoholo カメラ用 フォローフォーカ スギアリング」です。本来は、後付けのフォーカス・ズーム用のギアベルトであり、ズームレバー状のパーツは、ベルト状のギアを固定するためのネジです。

Yoholo カメラ用 フォローフォーカ スギアリング
実際に取り付けてみると、ギア部分のゴム素材が柔らかいためにレバー部分がクネクネとして不安定でした。そのため、ズームをスタートするタイミングが上手く決まらないといった感じです。ただし、触った感触としてズームレバーを追加するのはアリな気がします。いわゆるズームレバーのように、ズームリングにしっかりと固定できれば案外有効なズームの補助装置になりそうです。問題は、「ズームリングにしっかりと固定」することですが…。

Yoholo カメラ用 フォローフォーカ スギアリングを取り付けた状態

ギアリングの固定部分
Yoholo カメラ用 フォローフォーカ スギアリングのAmazon商品リンクはこちらです。
まとめ
スチル用の操作感が重いズームリングを動画撮影に使用する工夫を色々と試してきました。操作感を軽くするためにギア比を使うという発想で、フォローフォーカスを利用してみました。しかし、フォローフォーカスをレンズ鏡胴に対して遊びなく固定するのが難しく、この方法は頓挫しています。また、折角小型なスチル用の高倍率ズームにフォローフォーカスを取り付けるのは、荷物が増えて無駄なようにも感じます。
一方で、それほど重くはない、もう一息で満足できそうな操作感のズームレンズにズームレバーを取り付けるといった方法は可能性がありそうに感じています。
特注の専用パーツを取り付けるといった大袈裟なことは避けたいところです。違うレンズに買い替えた時に振り出しに戻ってしまうからです。できれば、市販の安価なパーツを追加することで、異なるレンズにも幅広く対応できるような方法が好ましいところです。

