2台目のFX30

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SmallRigのケージ・ウインドマフを取り付けたFX30と、アクセサリーパーツを一切取り付けていないFX30

 SONYからFX2が発表になっていますが、今回はFX30の話題です。
 ここ数年、SONYのFX30というカメラをメインカメラとして使用しているのですが、これまでに何度か2カメ以上での収録の必要がありました。そういったケースでは、既に所有しているBMPCCやBMPCC4Kと組み合わせて対応してきましたが、異なるメーカーの異なる機種での収録素材となると、それぞれのカメラで撮影した映像の色を合わせる作業にそこそこ手間がかかります。また、BMPCCはFHD収録のカメラです。納品する映像ファイルはFHDで良い場合が多いのですが、編集時の修正の可能性などを考えると、収録機材は4Kのカメラで揃えたいところです。
 そういった経緯で、思い切ってFX30をもう一台購入しました。ショートタイプのガンマイクを1本しか持っていないこともあり、2台目として購入したFX30はハンドルなしのモデル「ILME-FX30B」を選択しました。2台目は荷物の量を抑える意味でもできるだけシンプルな構成にしたかったので、ケージといった追加パーツも購入していません。ただし、FX30のマイクは風雑音が入りやすいので、ウインドマフだけはカメラの注文と同時に購入しました。
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SmallRig製のZ30用ウィンドマフを取り付けたところ

2台目候補

 2台目のカメラを購入する最大の目的は、2カメ収録時の編集素材の色彩調整を楽にすることです。ただし、これまでも撮影に持参するカメラが1台だけだと故障時の対応といった点で不安もあり、予備カメラとしての用途も兼ねての追加購入です。
 収録映像の色彩を揃える簡単な方法は、カメラのメーカーを揃える、次に同一メーカーの同一シリーズで揃える、最後は同じ機種にするといった方法が有効です。今回の場合、既に使っているFX30と色彩を揃えたいので、SONY製が第一条件、次にαシリーズであることが好ましい機種となります。
 こういった条件を考えると、同じSONYのZV-E10という機種でも良いように思えます。しかし、ZV-E10について調べると、発熱などの問題から長時間収録に不安があるようです。
 また、初代のZV-E10は10bitでの撮影ができませんでした。色補正での自由度を考えると、10bit収録も外したくないスペックです。もっとも、10bit収録については2台目カメラを検討している間にZV-E10 IIが発売され、このモデルは10bit収録に対応したようです。それでもZV-E10 IIも空冷ファンを内蔵していないようなので、長時間収録についての不安は残ります。
 長時間録画に不安がないという点では、SONYのハンディカムシリーズも選択肢に入りますが、色彩の統一性やバッテリーなど周辺機材の互換性という意味では、やはりミラーレスタイプの方が好ましいように思えました。
 こういった条件を考えつつ、現在メインに使っているFX30よりも高価なカメラを対象から外すと、FX30以外に選択肢がないという結論になりました。

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SmallRigのケージ・ウインドマフを取り付けたFX30と、アクセサリーパーツを一切取り付けていないFX30を背面から

FX30を2台揃えて良い点

 以前記載したFX30についての記述と重複する部分もありますが、2台目として追加購入するという意味も含めて良い点をあげてみます。

10bit・長時間収録・高いコスパ

 10bitで長時間収録できるカメラとしてコストパフォーマンスが高いといえます。ミラーレスカメラでありながらビデオ撮影を主用途としているために空冷ファンを内蔵しており、長時間収録で高い信頼性が期待できます。

同一機材なので操作が楽

 2台のカメラで収録する際にはフレームレートやビットレート、ホワイトバランスなど各種の設定を揃える必要があり、異なる機種だと操作が煩雑になりがちです。同一機種の場合は、全く同じ操作をするだけなので設定作業が楽です。撮影の失敗を防ぐ上で、案外大切なことです。

周辺機材を使いまわせる

 レンズやバッテリーなどの周辺機材を新たに揃える必要がないのに加え、ロケの際に持参する周辺機材も相互に予備として利用できるので、荷物を少なくすることができます

色合わせが楽

 マルチカメラ収録時に色温度などの設定を合わせておけば、既に持っているFX30とほぼ補正なしで色が揃います。ただし、色補正で明るさを調整した場合にクロマ(色の濃さ)に若干の変化が見られ、各カメラの色合いを揃えるための微調整が必要になります。これは、AppleのFinal Cut Proでの場合です。それでも基本的な色調を揃える手間がほとんど必要ないのは、とても楽です。

小型軽量

 1台目のFX30にはSmallRigのケージを付けっぱなしにしているのですが、久しぶりにケージなしのFX30をみると小型だなと思います。1台追加で持参しても、荷物の体積・重量の増加を抑えることができます。

1カメ収録時にも便利

 スチルのカメラマンが異なる焦点距離のレンズを装着したカメラを2台持ちしてレンズ交換の手間を省いて撮影をする姿を見ると、合理的だなと思います。カメラを2台揃えておくことで、マルチカメラでの収録ばかりでなくこういった撮影方法にも対応できます。

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SmallRigのケージ・ウインドマフを取り付けたFX30と、アクセサリーパーツを一切取り付けていないFX30

FX30:不満な点

 以前記載したFX30の不満点とは別に、長く使用してきて残念に思う点があります。

29.97fps設定が弱い

 23.98fpsや59.94fpsの場合は、豊富なビットレート設定が用意されているのですが、29.97fpsのビットレート設定は選択肢が少なくなります。29.97fpsはビデオフォーマットの基本的なフレームレートなので、少し残念なところです。

高感度収録でややノイズが目立つ

 私が使っているカメラで比べると、BMPCC4Kよりも高感度設定で収録した時のノイズが目立つようです。明るいズームレンズが少ないので、屋内撮影ではISO3200くらいまで感度を上げることもあり、高感度撮影時のノイズはもう少し頑張って欲しいところです。

APS-C用に設計されたレンズが少ない

 近年、SONY製のEマウントレンズは、フルサイズ対応のものが増えるのに対してAPS-C対応のレンズはむしろ減っています。フルサイズに比べてセンサーサイズの小さなAPS-C用のレンズは、同じサイズと価格でより大きなズーム比であったり、明るいF値などが期待できるのですが、そこをフルサイズ用で代用せざるを得ないのは残念なところです。
 つい最近、SIGMAからAPS-C用の16-300mmの高倍率ズームレンズが発売されましたが、なかなか良いレンズです。SONYに限らず各社APS-C対応のレンズを頑張って欲しいところです。

FCPに対応したメタデータが記録できない

 AppleのFinal Cut Proでマルチカメラクリップを作成する場合には、撮影した動画ファイルにカメラ名かリール名が設定されている必要があります。しかし、FX30ではFinal Cut Proに対応したメタデータとしてカメラ名・リール名・アングルの記録ができません。FCPでのカメラ名とリール名は、映像の読み込み時にメモリーカードの名称を書き換えれば設定できますが、カメラ内で設定できた方がスマートです。

TC出力ができない

 タイムコードシンクを行う際、FX30にはタイムコードの入力機能しかありません。複数カメラでタイムコードを同期する場合、別途タイムコード出力機能のある機材が必要になります。
 ただし、2台のタイムコードをある程度揃えるだけならば、2台を横に並べてタイムコードの値を同時にセットすることで、数フレーム以内の誤差で揃えることができます。実際にやってみたら、誤差0フレームでセットすることもできました。FX30のマニュアルで「他機とタイムコードを合わせる」の頁を見ると、「タイムコードを合わせる場合、1フレーム程度のずれが生じる場合があります。」と記載されているので、案外両手で2台各カメラのボタンを同時押しといった運用方法で十分かもしれません。

 どれも致命的な欠点といった訳ではありませんが、メタデータの記録やTC出力などはマルチカメラで撮影する際には微妙に不便を感じます。

まとめ

 サブカメラやマルチカメラ収録のための機材を検討して、改めてFX30のコストパフォーマンスの良さを感じました。FX30を追加購入してすぐに新型のFX2発表でちょっとガッカリな部分もありますが、FX2はフルサイズセンサー機なので、今回の追加購入の対象としては圏外かなという気もします。レンズも揃え直すとかなり高額な出費になってしまうのと、ビデオ用ズームとしては「ショートズーム」といったズーム比のレンズしか選択肢がないのがその理由です。
 今どきの映像制作の予算を考えると、カメラを2台揃えてもその費用の回収は難しいように思います。しかし、複数カメラでの収録時に同一機種で収録することで色合わせの手間を大きく減らすことができ、編集時間の短縮が期待できます。編集時間の短縮という利点も含めれば、案外コストパフォーマンスの良い選択かもしれません。
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