SIGMA 16-300mmその後

 4月に購入したSIGMA 16-300MM F3.5-6.7 DC OSのその後についてです。実際に数ヶ月使用して、ズームリングは使用と共に滑らかになるのかといったことや、様々な環境で撮影しての描写について記載します。

写真再掲 L06_photo_01
SIGMA 16-300mm

ズーム

 ズームリングの回転は、ごく僅かに滑らかになったようにも感じますが、レンズを下に向けたときにレンズの自重でズームレンズ群が自然に落ちて、ズームリングが勝手に回ってしまうといったことはありません。何年も使い込めば多少の変化はあるかもしれませんが、ほぼ購入時の操作感のままです。

写真再掲 L06_photo_03
ズームリングの後ろ(写真では下)にはズームリングのロックスイッチがあり、ワイド端で固定できる

 ズームリングの重さが一定ではなく、ところどころ重くなる部分があります。回転ムラというより、ズームのためのカム機構に起因する重さの変化だと思います。
 「ズームレンズ 分解」といった文言で画像検索をすると、筒に斜めに溝を切った画像が出てくると思います。多くのズームレンズでは、この溝に沿ってレンズ群を移動させることで、焦点距離を変化させます。
 このレンズの場合、恐らく溝の傾斜が一定ではなく、ある焦点距離からレンズの移動量を大きくするといった目的で溝の傾斜が変化しており、その部分でズームリングの操作感が重くなるのだと思います。
 実際にステージ撮影で使ったところ、ズームリングをしっかりと掴んで操作すれば、ズームリングの重さが一定な部分では割とスムーズなズーム操作が可能です。しかし、リングの操作感が重くなるところでは、ズームの動きが渋くなってしまいます。広いズーム域でゆっくりとしたズーム操作をするのではなく、狭い範囲での操作ならばそこそこ滑らかなズームが可能です。
 ムービー用に設計されたズームレンズでは、ズームリングを軽く摘まんでズーム操作をします。しかしこのレンズの場合、ズームリングをしっかりと掴んだ方が滑らかな操作が可能なように感じます。後は集中力と腕力・握力の勝負といったところでしょうか。私の場合、腕っぷしに自信のあるタイプではないのですが…。

明るさとボケ

 このレンズは、ズーム操作に伴ってF3.5からF6.7と明るさの変化するレンズです。しかしFX30に取り付けた場合、F7.1以上の絞り値に設定すればズーム全域で明るさの変化なく使用できます。つまり、F7.1通しのズームレンズとして利用可能です。レンズのスペック上は暗い方でF6.7ですが、カメラにF6.7という設定がないため、実質F7.1での運用になります。(これはカメラ側でレンズのF値変動を制御しているためで、本来はF7.1以上に設定してもズーム操作に伴って明るさが変化するレンズです。そのため、装着するカメラの機種によっては、ズーム操作で明るさが変化してしまうかもしれません。)
 F7.1というとほぼF8で、暗い環境での撮影には弱くなります。しかし、舞台の撮影でも明るく照明されたステージならば、カメラの感度をISO1600くらいまで上げることで十分な明るさで撮影できます。また、F7.1(スペック上はF6.7ですが、上記の理由で実質F7.1運用です。)と解放F値が最も暗い数字になるのは焦点距離280mm以上のごく限られた範囲なので、280mm以上の望遠域を使わないよう気をつければ、F6.3通しのように使うこともできます。このレンズの焦点距離とF値の関係は、「SIGMA 16-300MM」の「焦点距離とF値」の項をご覧ください。
 ほぼF8というと、当然ボケは少なくなります。これも、考えようによってはシビアなフォーカス操作が必要ないということで、特に長時間撮影するステージ収録ではリスクが減って歓迎できる要素です。

描写

 写真の場合は鑑賞する時間を好きに選べるのに対して、動画では視聴者の思惑とは関係なく時間とともに画面が移り変わります。また、写真は近づいて見るなど、一部を拡大して観察する場合もあるのに対して、動画の場合は基本的に一部のみを拡大観察するといった見方をしません。こういった点で、写真と動画ではレンズに要求される描写能力に差があります。このレンズは、少なくとも動画を撮るには不満のない描写です。
 たまたま屋内で使用する機会が多いのでほぼ開放での使用ばかりですが、解像感に不足を感じるようなことはありません。
 望遠時のボケに独特なクセがあるように感じられ、場合によっては描写について好みが別れるかもしれません。しかし、ボケの描写の美しさを求めるならば、ズーム比が2、3倍程度で開放絞り径の大きな(開放絞り値の小さな)望遠ズームレンズや単焦点レンズを選択するべきです。このレンズは、コンパクトさと大きなズーム比を活かして、ロケ場所の移動が多く荷物をコンパクトにしたい撮影や、短時間でバリエーションの多いカットを要求されるような撮影で威力を発揮します。

E PZ 18-200mmと比較して

 以前ご紹介した「ソニー製APS-C用Eマウント 高倍率ズーム E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSS」との使用感の違いを比較してみます。
 まず大きな違いは、SIGMAの16-300mmにはパワーズーム機能が無いということです。安定した定速のズーム操作という点では、SONYの18-200mmにかないません。しかし、SONYの18-200mmが劇的に使いやすいかというと、パワーズームのスイッチ操作が微妙で、思ったタイミングでのズームスタート・ストップ操作が難しいです。また、ズームの速度も、もっとゆっくりとした設定が欲しいなど、パワーズームさえ搭載していれば「無敵」というわけではありません。(速いズームの設定も欲しいのですが、その場合はマニュアル操作でも対応できるので、パワーズームの滑らかさを活かすという意味では、よりゆっくりとしたズームスピードが欲しいところです。)
 SONYの18-200mmを使っていて意外だったのは、ズームリングを操作してのマニュアルズームも割と滑らかに操作できることです。モーターでの滑らかなズーム駆動のために、ズーム機構がスムーズに動くよう設計されているためだと思います。一方のSIGMA 16-300mmは、マニュアルズーム操作の滑らかさという点でもSONYの18-200mmに及ばないといった印象です。このあたりは、SONYの18-200mmが動画での使用を意識したレンズなのに対して、SIGMAの16-300mmはスチル用のレンズなので仕方ありません。
 明るさ、つまりF値についてですが、SONY 18-200mmにはズームを折り返すタイミングで一瞬フォーカスが甘くなるといった難点があります。これについて詳しくはSONY 18-200mmの紹介で記載したので、そちらをご覧ください。このズームの折り返し時にフォーカスが甘くなる現象を目立たなくするためには、絞りをF11程度まで絞って使う必要があります。一方のSIGMA 16-300mmは、ズーム操作によってフォーカスが外れるといったことはありません。その結果、SIGMA 16-300mmはSONY 18-200mmよりも1絞り以上明るいF値で使えるということになります。もちろん、SONYの18-200mmもズーム折り返し時にフォーカスが甘くなることを気にしなければ、解放F値から問題ない解像感です。
 最後に焦点距離についてですが、SONY 18-200mmよりもワイド側で2mm広い16mmから、望遠側で100mm寄れる300mmまで撮影できるSIGMA 16-300mmの方が言うまでもなく便利です。ワイド側の18mmと16mmの違いは、常用レンズとして使ったときにワイド側が足りるか否かの境目といった印象があり、16mmまで引けた方が撮影時の自由度が圧倒的に高くなります。また、描写についても大きな差は感じられず、約11倍のズーム比となるSONYに対して18倍を超えるズーム比のSIGMAが同程度の描写力と考えると、SIGMA 16-300mmはなかなかに優秀だと思います。

まとめ

 約18倍というズーム比は、カムコーダー型のカメラに搭載されるレンズに匹敵します。また、ワイド側が16mm(フルサイズ換算で24mm)からと、カムコーダー搭載のレンズと比べても十分なワイド撮影が可能で、このレンズを取り付けておけばレンズ交換の必要がほとんどありません。早撮りが要求される撮影では、たいへん重宝します。
 なお、使用を続けてもズームリングの操作感が軽くなるといったことは期待できないようです。しかしこの製品のズームリングの重さでも、慣れればある程度のズーム操作は可能です。手動操作でのズームは、カムコーダーなどに搭載されたシーソー型のズームスイッチや、サーボモーター経由でのズームリングよりも思い通りにズームの開始・終了を操作することができます
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