SIGMA 16-300MM F3.5-6.7 DC OS

 SONYのカメラ、FX30と組み合わせる高倍率ズームレンズとしてSONYのE PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSを購入する時に、もう一本の候補として迷ったのがTAMRONの18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDというレンズでした。TAMRONの最大望遠時300mmは魅力的だったのですが、ズームリングが絶望的なまでに重く、その時はパワーズームも搭載しているSONYの18-200mmを購入しました。もっとも、TAMRON製品がダメという意味ではなく、元々スチル撮影用に設計されたレンズで動画を撮ろうという使い方にそもそも無理があるので仕方ありません。ただ、TAMURONのズームリングの重さはスチル撮影で焦点距離を選ぶのにもやや不便をするのではと思う重さですが…。
 そういったレンズ選びの経緯があった中で、今年(2025年)、SIGMAから16-300mmの高倍率ズームが発売されました。ズームリングの動作はTAMRONよりも軽く、SONYの18-200mmでは望遠側が少し物足りなかったこともあり、少々迷った末に購入を決めました。

写真 L06_photo_01
SIGMA 16-300mm
写真 L06_photo_02
SIGMA 16-300mm

動画撮影に使えそう?

 コンサートなどのステージ物を収録する時に、ズーム撮影が可能なレンズとして購入しました。ただし、コンパクトな高倍率ズームなので、F3.5からF6.7と開放F値は暗めです。そのため、舞台などの収録用に最適というわけではありません。そうは言っても、このあたりの価格帯で舞台収録に最適といえる製品がないのが実際のところです。暗めのF値は、カメラの感度設定で補うなどの工夫で対処するしかありません。
 F値が「通し」でないことについては、F6.7以上に絞って使えばズームの途中で明るさが変わることなく使えます

 購入したレンズを自宅で開封してみると、ズームリングの操作感は店頭で試したデモ品よりもやや重く感じました。これは各所の摺動部が馴染んでいないためで、使い込んでいくことで次第にズームリングの操作感は軽くなっていくと思います。
 レンズ本体には、レンズを下に向けた時に自重でレンズ部分がズルズルと滑り落ちてくるのを防止するロックスイッチがあります。新品の状態では下に向けてもレンズが落ちてくることはないので、使用とともにこのロックスイッチが必要になる程度にズームの動きが軽くなるのだろうと期待しています。

写真 L06_photo_03
ズームリングの後ろ(写真では下)にはズームリングのロックスイッチがあり、ワイド端で固定できる

デザイン

 サイズ感としては、TAMRONの18-300mmと同じくらいです。18倍ズームとは思えないコンパクトさで、フィルター径は67mmです。
 外装はオールプラスチック製のようで、重量もSONY Eマウント仕様のモデルで615gと軽量です。

写真 L06_photo_04
本体は恐らくマウント部分を除いて全てプラスチック製
写真 L06_photo_05
素早いズーム操作を行うと、レンズ後端では空気の流入・流出がおきる

 ズーム操作に伴ってレンズ全長が変化するタイプで、最大望遠時には倍ほどの長さになります。
 ズーム操作をすると、レンズの後端部分で空気の出入りがあります。素早いズーム操作ではかなり勢いよく空気が吹き出すので、センサーに影響がないか気になるところです。

写真 L06_photo_06
最大望遠にすると、レンズの全長は倍ほどに伸びる

 フォーカスリングはくるくると空回りするような動作のものではなく、マニュアルレンズのような操作感でなかなかに使いやすいです。

写真 L06_photo_07
レンズマウント寄りにあるのがフォーカスリング

 ユニークなのが前玉のフチに刻印されたレンズ名称などの文字です。黒い文字で印字されているのですが、光沢の具合で文字が読めるといった印刷になっており、通常の白い印字ではありません。白文字だからといって保護フィルタやNDフィルタに反射するといったことはないと思いますが、そういった無駄な反射を抑えられそうに感じます。

写真 L06_photo_08
前玉周辺にあるレンズ名称の刻印が特徴的

 付属品として花形のフードが付属します。
 その他に簡易なレンズポーチが付属するのですが、かなり薄手の素材でレンズを保護する効果はほぼ無さそうです。レンズキャップなどを整理しておくのには使えるかなという印象です。レンズを製造したメーカーが収納用のポーチとして付けるのであれば、カメラバックに他の機材と入れた場合に衝撃や擦り傷を防ぐことができる程度の保護力のあるものを付けて欲しいところです。

写真 L06_photo_09
付属の花形フードを取り付けてFX30と組み合わせた状態

描写

 YouTubeに投稿されたレビュー動画を検索してみると、海外の動画でTAMRONの18-300mmと比べたものがあり、焦点距離によってはTAMRONに劣るような結果でした。SIGMAの16-300mmは、ワイド端で2ミリワイド側に広げたことに若干無理があったのではという印象です。ただし、解像度チャートを撮影したものを拡大した時に焦点距離によって僅かな差が認められる程度で、実写映像で明らかな差が見られるほどではありません
 実際に静止画や動画を撮影してみると、少なくともこのブログで紹介してきた他のレンズに比べて劣るといった印象はありません。以前記載したSONYの18-105mm10-20mmといったレンズで撮影したカットと混在させても、違和感は無さそうです。
 以下にFX30との組み合わせで撮影した動画を掲載します。

動画 L06_movie_01

 今どきのレンズはカメラボディ内での歪み補正を前提に作られているので、FX30との組み合わせで上手く補正機能が動作するか気になっていました。撮影したものを見る限りでは、各種補正も上手く機能しているようです。
 他のレンズでの試し撮りと揃えたショットに加えて、幾つかの焦点距離で開放近くでの描写を試してみたものも加えています。普通に景色を撮影するような用途では、解像感に違和感を感じるようなことは無さそうです。細かな点ですが、以下の2点が気になりました。
 cut6の逆光時にややコントラストが低下しているように見えます。cut7は同じ対象物をレンズが完全に日陰になる位置から撮影したもので、コントラストが改善しています。逆光時には、レンズに余分な光が入らないよう気をつけた方が良いかもしれません。
 また、F値が大きく、なおかつズームと共にF値が変化するレンズなので、望遠時には極端に大きなF値を設定できるため、回析現象による解像力の低下が見られます。cut8cut10のように、大きく絞った際には若干の解像力の低下が見られます。それぞれのカットに続けて絞りを少し開けた映像を収録しているので、比較してみて下さい。(大きめのモニタで全画面表示にしないと、違いが分かりにくいかもしれません)
 もっとも、回折現象はこのレンズに限ったことではなく、大きな絞り値ではどのレンズでも起こる現象です。このブログで紹介したレンズで言えば、SONYのE PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSでも同じ焦点距離で同じ絞り値のとき、同様な解像力の低下が起こります。APS-CセンサーサイズではF22程度を絞り値の上限として使った方が良さそうです。
 回析現象によるボケは、しっかりと合焦した周辺ににじみのようにボケが広がる独特な描写です。解像力のないレンズの甘い描写やピンボケ映像とは異なるので、回析現象によるボケを積極的に活かすといった使い方も面白いかもしれません。
 全体的には、各焦点距離で開放から安定した描写で、価格とズーム比を考えると十分な写りなのではと思います。

手動ズーム

 以下は、ズームリングを手で回す、手動ズーム操作で撮影した映像です。 元々そういった操作を前提に作られたレンズではないので、参考程度にご覧ください。

動画 L06_movie_02

 購入から数日後に撮影したもので、まだまだズームリングの動作は渋く滑らかなズーム操作ではありません。ただし、この映像では16mmから300mmまでズームリングを一気に回していますが、限られた範囲でのズームであればもう少し滑らかな操作ができそうです。
 ある程度使い込んでズームリングの動作が軽くなれば(なるならば)、もう少し滑らかな操作が可能になるかもしれません。しかし、内部のカム機構の関係で一定の焦点距離ごとにズームリングを回転させた時の負荷が変化するので、多少ズームリングの動きが滑らかになっても、動画撮影用に設計されたズームレンズのような滑らかな操作は難しいでしょう。

手ブレ補正

 このレンズには手ブレ補正機能が搭載されており、メーカーホームページによれば「ワイド端で6段、テレ端で4.5段」の補正能力があるとのことです。
 他のレンズで手ブレ補正を試したのと同じ場所で撮影したのが以下の動画です。

動画 L06_movie_03

 FX30との組み合わせで、手ぶれ補正なし、スタンダード手ブレ補正、アクティブ手ブレ補正を手持ち撮影で試した動画です。なお、FX30のマニュアルでは、スタンダードとアクティブの違いについて詳しい説明はありませんが、スタンダードがレンズの手ぶれ補正機構とFX30のボディ内手ぶれ補正機構を併せて機能させた状態、アクティブがさらに画像をクロップして補正の範囲を広げたものだと思います。そのため、FX30と組み合わせた場合にこの程度の手ぶれ補正能力があるという参考としてご覧下さい。
 手ぶれ補正機能とは関係ありませんが、16mmアクティブ手ぶれ補正の時に、若干フォーカスが迷っているのが気になります。恐らく画面下の走行する電車の動きに反応してしまったのだと思います。これは、レンズのAF機能云々ということではなく、カメラボディの方でのAF制御の問題だと思います。
 300mmの最大望遠で手持ち撮影をする機会はあまりないと思いますが、一応試してみました。また、300mmの最大望遠時にFX30の超解像ズーム機能を使って、更に1.5倍のズームをした場合にどの程度の画角で撮影できるかも試してみました。1.5倍の超解像ズームに加え、アクティブ手ぶれ補正でのクロップも加わっているので450mm以上の望遠映像です。
 特に手ぶれ補正が強力といった印象はありませんが、SONYの18-200mmと同じくらいに補正されているように思います。また、レンズが軽量なので、比較的手持ち撮影でもブレを少なく撮影できるように感じます
 ここでは普通に立って撮影をしていますが、壁などで身体やカメラを持つ手を支えれば、200mmや300mmといった望遠時にもそこそこ安定した映像を撮ることができそうです。
 また、手持ちでの歩き撮りを試したのが以下の動画です。

動画 L06_movie_04

 こちらも、他のレンズでの焦点距離16mmの歩き撮りと大きな差はないように感じます。但し、レンズが前後に長いため、歩き撮りのような場合はややブレが出やすいようです。

焦点距離とF値

 各焦点距離とF値の関係をみてみると、以下のようになります。
(細かな焦点距離の値は、ズームリングに印字された大雑把な焦点距離の数値から推測した値です)

焦点距離F値
16mm-18mmF3.5
18mm-26mmF4.0
26mm-38mmF4.5
38mm-48mmF5.0
48mm-90mmF5.6
90mm-280mmF6.3
280mm-300mmF6.7

 F6.7になるのは、300mm付近のごく僅かな焦点距離のみです。F 6.7というと、F6.3とF7.1の中間くらいです。F6.3とF7.1は1/3絞り違いなので、280mmから300mmで1/6絞りほど暗くなる程度でしょうか。実際にカメラの液晶モニタではF6.3とF6.7の違いはほとんど分かりません。実際の運用で明るさが変化しないようカメラのF値を設定する場合、開放F値をF6.3として撮影してもほとんど気になることはないかもしれません。より厳密に値の変化が無いよう設定する場合、F6.7という設定値はカメラにはないので、F7.1と設定するしかありません

まとめ

 AFの速度については特にテストしていませんが、これまでに試したSONY製のズームレンズと差はないように感じます。ただし、AFの速度は組み合わせるボディの性能にも影響されると思います。そのため、「他のレンズと差はない」といった程度のことしか言えません。
 SIGMAというと、以前は安価なレンズを提供するメーカーというイメージだったのですが、近年では他のメーカーが手を付けない、やや尖った製品を作っているような印象があります。このレンズもAPS-Cセンサーが小型なことを活かした高倍率ズームレンズで、動画撮影でも重宝する種類のレンズです。
 APS-C用のズームレンズは、SONYやTAMRON、そしてSIGMAでも18mmからのズームレンズが多いのですが、実際のところもう一息ワイド側が欲しい場面が多くあります。その点、このレンズは16mmからと2mmワイド側に広い焦点距離からなのも魅力です。ステージ撮影時の高倍率ズームとして購入しましたが、常用のズームレンズとしても使いやすい焦点距離のレンズです。
 SIGMA CONTEMPORARY 16-300MM F3.5-6.7 DC OS Eマウント仕様のAmazon商品リンクはこちらです

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です