インターレース方式について

 テレビで使われる「インターレース」という表示方式について記載します。「インターレース方式」という言葉をネットで調べてみると、静止画像の表示でも使われる考え方のようですが、ここではテレビ画面の表示に絞って記載します。SDテレビ放送や、現在の地上デジタル放送でも使われている技術です。

走査線

 テレビは、「走査線」と呼ばれる線で映像を描いています。この「線」に明暗や色彩の情報が加わり、画面が描画されます。信号としては線状の情報なのですが、画面に表示される際にはv03_fig_01のように幅をもった帯状になって表現されます。

画像 v03_fig_01

 走査線には定期的に水平同期信号が挿入されています。走査線の表示が画面の横端まで到達すると、この水平同期信号を検知して折り返し、一段下の描画に移ります。SDと呼ばれるスタンダードテレビ方式では、約480本の走査線で1枚のフレームを描画します。SDテレビの規格としての1フレームあたりの走査線数は525本ですが、約40本の操作線は「ここで1枚のフレームは終わり」といういわば改ページ信号やタイムコードの記録に使われているため、実際に画像を描くことに使われる走査線の本数はおよそ480本になります。
 テレビ放送やビデオでの映像記録がデジタルになり、走査線という感覚が薄らいできています。しかし、アナログテレビ映像の時代は、この走査線が色を変えながら何度も折り返して一枚の画像を描き、ページを変えて再び画像を描くといった動作を繰り返すことで動く映像を映し出していました。

フレームとフィールド

 SDテレビでは480本の走査線で1フレームを描画して次のフレームの描画に移ると記載しましたが、実際にはインターレースという表示方式をとっているために、240本の走査線で1枚の画面を描画して次の画面の描画に移行します。このような表示方法を採用した理由について詳しくは知らないのですが、1秒あたりのフレーム数が30枚ではチラつきが多く、見辛かったために擬似的にフレームレートを上げる工夫だったのではと思います。
 480本の走査線で描かれる1秒あたりのフレーム数は30枚ですが、走査線を半分に分けて表示することで、1秒あたり60枚の画像を映し出しています。つまり、見かけ上のフレームレートは60fpsのような滑らかさで動きを記録・再生しています。
 ただし、1秒間に60枚の画像を表示しても、1枚の画像を描画する走査線数は半分なので、60fpsとはいいません。240本の走査線で描かれた1枚づつの画像を「フィールド」と呼び、「フレーム」とは区別しています。そして、2つのフィールドがセットになったものを「フレーム」と呼んでいます。タイムコードのカウントもフレーム単位でカウントし、フィールドはあくまで補助的なものとなっています。

インターレース走査

 インターレース方式では、走査線を上から1本目、2本目と数えたときの偶数番目の走査線と奇数番目の走査線とに分けることで2つのフィールド画像を描画します
 例えば、v03_fig_02のような丸が横に移動する60fpsの映像があるとします。インターレース方式でこの映像を記録する場合、1枚づつの画面を完全な形で記録することはできません。

画像 v03_fig_02

 v03_fig_03は、仮に1枚の画面を30本の走査線で表示する形で図にしています。グレーになっている部分は、記録されていない部分です。走査線は1行おきに記録・表示され、1コマづつ奇数本目と偶数本目が入れ替わります
 走査線を交互に表示するインターレース方式に対して、1フレームを2つのフィールドに分けずに1枚の画面として描写する方法をプログレッシブ方式と呼び、v03_fig_02がそれにあたります。30fpsプログレッシブで記録したDVDと30fpsインターレースで記録したDVDをテレビで視聴すると、インターレースで記録した映像の動きは圧倒的に滑らかです。

画像 v03_fig_03

 インターレース方式では、2枚のフィールドが1セットになって1フレームとなります。そのため、インターレース方式の映像を1フレームとして表示した場合、動きのある部分にv03_fig_04のようなギザギザな形状が現れます。「櫛形ノイズ」と呼ばれるギザギザですが、異なる瞬間を記録した2つのフィールドを合成した結果として現れた形状なので、ノイズという表現が適切かやや疑問に感じます。

画像 v03_fig_04

優先フィールドの上下とは

 映像編集アプリのインターレース設定の項目に、「優先フィールドの上下」という設定項目があります。これは、奇数本目を集めたフィールドを先に表示するか、偶数本目を集めたフィールドを先に表示するかを設定します。走査線は1行目から数えるので、奇数本目の走査線を集めた場合が「上」、偶数本目の場合が「下」となります。
 SDビデオの場合は、偶数本目の走査線を集めたフィールドが先に表示されるので、優先フィールドは「下」となります。一方、HDTVは奇数本目の走査線を集めたフィールドが先に表示されるので、優先フィールドは「上」になります。

29.97i?59.94i?

 映像編集アプリやカメラの設定で59.94iという表記を見ることがあります。60ではなく59.94と半端な数字な理由は「タイムコードとフレームレートの小数点」をご覧ください。
 「i」は「インターレース」を表します。ここまで記載した考え方だと、59.94iは59.94fpsの映像をインターレス方式で記録・再生するフレームレートであるかのように見えます。しかし、ここでの59.94はフレームレートを表すのではなく、画面を描画する周波数、PCモニタで言うところのリフレッシュレートを表すのだと思います。つまり59.94iで記録・再生される映像は29.97fpsインターレース方式の映像を指しています。

まとめ

 インターレース方式のテレビ映像のフレームレートは30fpsですが、1フレームを2つに分けた60フィールドの画像で動きを表現します。そのため、60fps相当の滑らかな動きです。これは、SDテレビもHDTVテレビも同様です。ただし、SD映像では偶数走査線で描いたフィールドが1フィールド目、奇数走査線で描いたフィールドが2フィールド目なのに対して、HDTVは奇数走査線で描いたフィールドが1フィールド目、偶数走査線で描いたフィールドが2フィールド目と逆になります。
 インターレース方式についての理解は、DVDvideoの作成時やインターレース方式で作成された映像のデジタイズ・編集時、また24fps映像を30fpsインターレースに変換する際の2・3プルダウンといった作業の理解に役立ちます。

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