ローリングシャッターの歪み 〜FX30の場合

 デジタルカメラなどに使われるイメージセンサーの信号の読み取り方式には、グローバルシャッター方式とローリングシャッター方式の2種類があります。前者のグローバルシャッター方式では、イメージセンサーに当たった光を全ての画素で同時に読み出します。一方、後者のローリングシャッター方式では、センサーに並ぶ画素の横一列を一ラインとして、上から順に一ラインづつ読み出していきます。つまり、画面の一番上のラインを読み出すタイミングと一番下のラインを読み出すタイミングにはズレがあり、横に素早く移動するものを撮影すると斜めに歪んで写ってしまいます。この歪みが「ローリングシャッター現象」です。
 こういった歪みの出ないグローバルシャッター方式のセンサーが望ましいのですが、恐らくセンサーの価格が高価なのだと思われ、グローバルシャッター方式のセンサーは高価なカメラにしか搭載されていません。

FX30の場合1 横方向

 SONYのFX30はローリングシャッター方式のセンサーを搭載したカメラです。このカメラでローリングシャッターによる歪みの現れ方をみてみます。円筒に縦縞を印刷したものを回転させることで、横に移動する物体を簡易的に再現します。ここではFX30のスチル写真モードでテストしています。
 c15_photo_01は、シャッタースピード1/50秒で撮影した写真です。縦縞が画面の右から左に移動する動きで、縦縞は右に傾いています。つまり、画面の下ほど「遅れた瞬間」を捉えている状態です。

写真 c15_photo_01
画面の右から左に移動する縦縞を1/50秒のシャッタースピードで撮影

 c15_photo_02は、シャッタースピード1/500秒で撮影した写真です。シャッタースピードを速くしたためにブレは大幅に減っていますが、縦縞の傾きは同程度です。

写真 c15_photo_02
画面の右から左に移動する縦縞を1/500秒のシャッタースピードで撮影

 シャッタースピードを速くしても縦縞の傾きが同じことから、シャッタースピードの設定に関わらずセンサーの読み出し速度は一定であることがわかります。つまり、シャッタースピードを速くしても、センサーの一番上のラインから一番下のラインまでが捉える時間は速くはなっていないようです。では何が1/500秒なのでしょうか。おそらく、1ラインが捉える光が1/500秒になっているということなのだろうと考えられます。
 この横に移動する被写体が斜めに歪む現象は、動画撮影でも同じように現れます。c15_photo_03は同じ被写体を動画モードで撮影したファイルから切り出したフレームです。ただし、縦縞の傾き具合は、スチル撮影時よりもやや軽減しているように見えます。画面の縦横比の関係で、動画撮影時はスチルモードよりも縦方向の使用画素が少ない、あるいは画面全体での画素がスチル撮影時よりも少ないことで、ローリングシャッターによる歪みが軽減しているのかもしれません。

写真 c15_photo_03
動画でも同じ歪みが現れる

FX30の場合2 縦方向

 横位置に構えたカメラでは、横に移動する被写体が斜めに歪んで映りますが、センサーに対して縦方向に移動する被写体の場合はどうでしょう。前項と同じ被写体を、カメラを縦にして撮影してみました。
 c15_photo_04は、FX30のグリップを上にした縦位置で撮影した写真です。画面の右から左に向かって縦縞は移動しています。シャッタースピードは1/500秒です。

写真 c15_photo_04
画面の右から左に移動する縦縞を1/500秒のシャッタースピードで、グリップを上にした縦位置で撮影

 c15_photo_05は、グリップを下にした縦位置で撮影した写真です。シャッタースピードは1/500です。

写真 c15_photo_05
画面の右から左に移動する縦縞を1/500秒のシャッタースピードで、グリップを下にした縦位置で撮影

 c15_photo_04では、カメラの上は画面の左側になり、画面の左から右に向かってセンサーの読み出しが行われてる形になります。つまり、センサーの読み出し方向と縦縞の移動方向が反対になることで、縦縞は縮んで写っています
 これに対してc15_photo_05では、カメラの上は画面の右側になり、画面の右から左に向かってセンサーの読み出しが行われてる形になります。つまり、センサーの読み出し方向と縦縞の移動方向が同じになることで、縦縞は伸びて写っています
 このことから横位置で撮影した場合、ローリングシャッターによる歪みは、横方向に移動する被写体にのみ現れるのではなく、縦方向に移動する被写体にも伸びる・縮むといった形で現れることがわかります。
 このように縦横に歪みが発生するため、高速で回転するプロペラなどを撮影すると、複雑な歪みが現れます。

Z6の場合

 Nikon Z6の場合を見てみます。現在では3型が販売されているZ6ですが、ここで試しているのは初代モデルです。Z6には、イメージセンサー前にメカニカルシャッターが組み込まれています。実際に撮影したのがc15_photo_06です。FX30の場合と同様に回転する縦縞を1/50秒のシャッタースピードで撮影した写真です。

写真 c15_photo_06
画面の右から左に移動する縦縞を1/50秒のシャッタースピードで撮影

 ローリングシャッターによる歪みは現れていません。シャッターが開いている1/50秒の露光時間の間に歪みが生じない仕組みがよく分からないのですが、メカニカルシャッターが加わることで歪みの発生を防いでいるようです。ただし、画面中央付近でローリングシャッターで発生する歪みとは逆向きに傾いているように見えます。円筒状の被写体なので、画面中央付近が縦縞の移動速度は最も速いことと関係あるかもしれません。
 同じものを1/500秒のシャッタースピードで撮影したのがc15_photo_07です。普通に考えると、センサーの読み出し速度よりも速くシャッター幕が閉じてしまうと、読み出しが追いつかない部分では映像が写らず黒くなってしまうのではと考えてしまいます。しかし、全画面が欠けることなく、またローリングシャッター歪みもない写真になっています。ただし、ここでも画面中央付近でローリングシャッターで発生する歪みとは逆向きに傾いているように見えます。

写真 c15_photo_07
画面の右から左に移動する縦縞を1/500秒のシャッタースピードで撮影

 ローリングシャッター方式のイメージセンサーでは、感光は瞬間的に行われ、読み出しが遅いだけということでしょうか。しかし、感光が瞬間的に行われるのであれば、そもそもメカニカルシャッターが無くとも画像の歪み、つまりローリングシャッター現象は生じないはずです。細かな仕組みはよく分かりません。いずれにしても、メカニカルシャッター搭載のカメラではローリングシャッターによる歪みを極端に気にする必要はなさそうです。
 また、FX30で試したのと同様に、カメラを縦位置にして撮影したのがc15_photo_08とc15_photo_09です。グリップ部分を上にした場合と下にした場合の2枚なのですが、縦縞の幅に差はなく、ここでもローリングシャッターによる歪みは現れていません

写真 c15_photo_08
画面の右から左に移動する縦縞をZ6で縦位置で撮影
写真 c15_photo_09
画面の右から左に移動する縦縞をZ6で縦位置で撮影

 ただし、Z6で動画を撮影する場合、メカニカルシャッターは開いたままになります。そのため、動画映像にはローリングシャッターによる歪みが現れます(c15_photo_10)。歪み具合は、FX30の場合よりも大きく見えます

写真 c15_photo_10
Z6で動画を撮影すると、ローリングシャッターによる歪みが現れる

写真撮影時の歪み

 ローリングシャッターによる歪みに対して気をつけるケースとして、横に移動する被写体や横向きの素早いパンが考えられます。しかし、この他にも手持ちでの撮影時の手ブレにも気をつけた方が良さそうです。
 動画の場合はそもそも激しい手ブレを避けるので、あまり影響はありません。また、意図的に手ブレの激しい画面を撮影する場合も、画面の揺れで微細な歪みなどは気にならないことが多いと思います。しかし、写真の場合はやや異なります。
 超望遠レンズを使った撮影時、速いシャッタースピードで撮影すれば手ブレのない写真を撮ることが可能です。しかし、メカニカルシャッターの内蔵されていないカメラで撮影した場合、ローリングシャッターによる歪みが現われます。広角レンズでの撮影の場合、手ブレによる被写体の画面内での移動量や移動スピードは、ローリングシャッターの影響を受けるほどではないことが多いです。しかし望遠レンズを使い手持ちで撮影した場合、被写体は画面内で激しく揺れ動きます。高速のシャッターでブレを防いだとしても、ローリングシャッターによる歪みが生じてしまいます
 こういった場合、カメラやレンズの手ぶれ補正機能を使うのが無難です。歪みを目立たない程度に抑えることが可能です。c15_photo_11から13は、FX30の手ぶれ補正機能をoffにして、300mmで方眼模様を撮影したものです。それほど盛大な歪みではないものの、よく見ると斜めに歪んだり、縦に伸びているのが分かります。

写真 c15_photo_11
FX30の手ブレ補正を切って、300mmで撮影
写真 c15_photo_12
FX30の手ブレ補正を切って、300mmで撮影
写真 c15_photo_13
FX30の手ブレ補正を切って、300mmで撮影

 一方のc15_photo_14から16は、FX30の手ぶれ補正機能をonにして、300mmで方眼模様を撮影したものです。c15_photo_11から13と比べると目立った歪みは見られません

写真 c15_photo_14
FX30の手ブレ補正を入れて、300mmで撮影
写真 c15_photo_15
FX30の手ブレ補正を入れて、300mmで撮影
写真 c15_photo_16
FX30の手ブレ補正を入れて、300mmで撮影

まとめ

 FX30は動画撮影を主目的としたカメラなので、ここで記載したスチル撮影でのローリングシャッター現象は致命的な欠点ではありません。また、動画撮影時のローリングシャッター歪みについては、同クラスの他機種に対して劣るということはなさそうです。
 一方で、資料撮影やロケハンなどでスチル撮影をする場合は、必要に応じて手ブレ補正機能を併用した方が良さそうです。(スチル撮影時は、手ブレ補正機能を常時ONにして支障ないように思えますが、手ぶれ補正はそれはそれで、レンズやセンサーが動くことに基づく画像の歪みが発生する可能性があるので、常時入れっぱなしも問題があるかもしれません。)

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