PD対応モバイルバッテリー UGREEN モバイルバッテリー 20000mAh

 近年では様々な機器の充電ポートがUSB端子になり、USBモバイルバッテリーを用意しておけば、撮影関連の機器の外部バッテリーとしても利用できるようになりました。大容量のUSBモバイルバッテリーも数多く発売されているので、撮影機器用の外付けバッテリーよりも小型で安価に入手できるのも魅力です。

FX30の給電

 近年発売されているカメラの多くには、充電用のポートとしてUSB-C端子が搭載されています。私がここ数年メインに使用しているFX30もUSB-C端子搭載で、この端子からカメラ本体にセットしたバッテリーの充電が可能です。また、USB-C端子から給電しながらの撮影も可能で、USB充電器をいわばACアダプタとして使用することができます。
 ただし、USB-C端子から給電しながら長時間の撮影をするにはUSB充電器がPD対応である必要があり、PD非対応のUSB充電器をACアダプタ代わりとして使用した場合、カメラ本体のバッテリー残量が少しづつ減少してしまいます。これは、PD非対応のUSB充電器からの出力では、FX30の消費電力を賄い切れないためのようです。

FX30の消費電力

 FX30の消費電力についてマニュアルの仕様欄を確認すると、「(E PZ 18-105mm F4 G OSS使用時で)約5.6W(動画撮影時)」と記載されています。パワーズームや、手ぶれ補正機能の使用、トップハンドルからのファントム電源供給の有無によって消費電力は多少変化すると思われます
 FX30用のバッテリーの容量表示から消費電力を概算してみます。FX30用のバッテリーであるNP-FZ100は7.2V/2280mAで、このバッテリー1本で2時間ほど稼働できる印象です。消費電力はアンペア(A)×ボルト(V)=ワット(W)で計算するので、1時間あたりの消費電力は2.28A × 7.2V ÷ 2(時間)で8.2Whとなります。ちなみにマニュアル記載の5.6Wで計算すると、NP-FZ100バッテリー1本で3時間弱撮影できる勘定になります。実際にはバッテリー1本で3時間は無理な印象なので、5.6Wという数字はかなり省エネモードで運用した場合の数字と考えた方が良さそうです。
 トップハンドルにガンマイクを取り付けて使用した場合はもう少し稼働時間が短くなるように感じるので、10Wくらいと考えて必要なバッテリー容量などを計算した方が安心かもしれません。
 余談ですが、FX30のアクセサリー商品としてDCカプラー「DC-C1」というパーツがあります。この商品ページには「出力65W以上のUSB PD対応のUSB ACアダプターなどの外部電源と5A対応のUSBケーブルをご用意ください」と記載されています。さすがに65Wは大容量過ぎる気もしますが、或いはSONYのαシリーズ全般に対応した場合には、そういった容量を必要とするモデルもあるのかもしれません。ここでは、FX30本体のUSB-C端子からの電源供給を想定しているので、DCカプラー「DC-C1」に要求される65Wという値はとりあえず無視します。

PD給電

 USB端子には様々な規格があります。従来から使われているのがUSB-A端子で、録音機器などには従来のUSB-A端子を小型化したmini USBやMicro USB端子が使われてきました。このUSB-Aよりも新しい規格の端子として登場したのがUSB-C端子で、近年発売されるカメラなど多くの機器にこの端子が使われています。
 USBは同一の端子形状でもバージョンが様々にあり、USB-A端子の場合であっても給電の仕様はUSBバージョン2.0が2.5W、USBバージョン3.2が4.5Wと値が異なるようです。USB-C端子の場合にはさらにPDという規格にも対応していて、100Wまでの電力供給を可能とする規格としてスタートして、現在では240Wまでの電力供給が可能になっています。PDはPower Delivery(パワーデリバリー)の略です。
 モバイルバッテリーにもPD給電に対応したものがあり、FX30に給電しながらの撮影ではPD対応のモバイルバッテリーを使用する必要があります。

UGREEN モバイルバッテリー 20000mAh

写真 c11_photo_01
UGREEN モバイルバッテリー 20000mAh本体

仕様について

 このモバイルバッテリーについて、UGREENのホームページには記載がなく、Amazonの商品紹介ページにしか仕様情報がありませんでした。Amazonの商品紹介ページによると、USB-A端子からだと22.5W、USB-C端子からだとPDで20Wの出力が可能なようです。
 このページの記載では、USB-A端子からもPD出力が可能なようにも読み取れますが、PDはUSB-C対応の出力方式です。ただしUSB-A端子からの給電でも、急速充電に対応するための大容量出力を可能にする場合があり、「PD」出力ではないものの、22.5Wの給電をするといったことは実際にあり得ると思われます。USBには様々なバージョンがあるのに加えて、給電についても急速充電への対応などメーカー各社で多様な工夫が加えられているために、仕様書の表記が正しいのかを判断するのは難しいところです。
 実際にUSB-A端子からFX30に給電しながら撮影してみると、カメラ本体のバッテリー残量は減少しました。やはりUSB-A端子からの出力はPD給電ではないようです。

操作

 よくあるモバイルバッテリーの形状ですが、充電状況を示すLED表示があるのが目立ちます。1%刻みで充電状態を確認できるのは有難い仕様です。

写真 c11_photo_02
バッテリー本体には、バッテリーの充電状態を示す表示がある

 バッテリー本体側面にはボタンが設置されており、ボタン操作で充電状態を変更することができます。マニュアルによると、

  • ボタンのクリックでバッテリー本体の電源をオフ
  • ボタンのダブルクリックで給電をオフ
  • ボタンを3秒長押しでトリクル充電モードのオン・オフ

といった機能が搭載されているようです。

写真 c11_photo_03
バッテリー側面には、バッテリーの給電モード切り替えボタンがある

 バッテリーの電源オフと給電オフの違いが今ひとつ分かりづらいことや、トリクル充電モードの状態がバッテリー本体の液晶表示からは分かりづらいのが難点です。
 また、このボタンを実際に操作してみると、

  • ボタンのクリックでバッテリー本体の電源をオン(給電開始)
  • ボタンのダブルクリックでバッテリー本体の電源をオフ(給電停止)
  • ボタンの長押しでトリクル充電モードのオン・オフ
  • トリクル充電モードの時、LEDインジケータの一桁部分の表示が時計回りに回転するようなアニメーション表示になる。トリクル充電モードの時、ボタンを一度クリックでこのアニメーションが表示され、トリクル充電モードであることが確認できる

といった動作のように見えます。充電状態を変化させる機能は、モバイル機器を充電するには便利だと思います。しかし、撮影機器の外部電源として使う場合に給電状態になっていなかったといった失敗の心配があるので、ボタンの動作をよく試してLED表示とバッテリーの給電状態の関係をしっかり把握しておく必要があります。
 バッテリー本体に設置されたUSB-A端子には「out」と記載されているのに対してUSB-C端子には「in/out」と記載されているので、バッテリー本体を充電する場合はUSB-C端子を使用するのだと思います。

写真 c11_photo_04
3つのUSB端子が装備されており、USB-C端子のみ「in/out」の表記になっている

容量

 モバイルバッテリーの電圧は3.7Vを定格電圧としているようです。バッテリー本体に記載された74Whという数字も、3.7V×20Aで計算が合います。20000mAhという容量は3.7Vで使用した場合の値で、FX30の場合7.2V必要になるため、半分の10000mA相当とみて良いでしょう。FX30用のNP-FZ100は2280mAなので、およそ4.4本分程度と考えられます。

実際に給電して

 実際にこのバッテリーのUSB-C端子からFX30へ給電をしながら撮影をしてみると、約50分でUGREENの残量表示が90、約100分で80となり、約50分で10%程度の電力消費でした。単純計算で、最大500分ほど撮影できそうです。これは、バッテリーの74Whと、前記のFX30の消費電力の概算8W程度という値と併せて考えると妥当な値です。ただし、トップハンドルを取り付けていない状態で、単にカメラを回しっぱなしにしてのテストです。実際の撮影ではパワーズームやオートフォーカスの駆動といった電力消費も加わるので、もう少し短い収録時間を予想しておいた方が安心だと思います。
 なお、USB-C端子からFX30へ給電中に、USB-A端子から他の機材への給電を行おうとしたところ、USB-A端子に接続した機材は起動しませんでした。FX30への給電をやめて、USB-A端子にのみ接続した状態であれば起動するので、複数端子からの給電時には、個々の端子からの出力は落ちるようです。全く給電されなくなるというわけではなく、スマホの充電などは反応するので電圧が上がりきらないなど何らかの制限がかかるようです。

まとめ

 「PD対応 モバイルバッテリー」で検索すると、様々な製品がヒットします。今回記載したUGREEN モバイルバッテリー 20000mAhは、PD出力対応のモバイルバッテリーの中でも比較的安価な製品です。FX30への給電で、2、3時間の収録には十分耐えられそうです。
 バッテリーの価格は、内蔵するバッテリーセルの選定に大きく影響されるようです。そういった意味では、より高価な製品を選択した方が安心感は高まります。しかし、バッテリーは使用しなくても次第に劣化・消耗していきます。稀に使用するだけならば、それほど高価なものを選ばなくとも、適宜買い替えていった方がコストパフォーマンスが良いように感じます。
 また、バッテリーの価格が信頼性の高さに比例するかというと、必ずしもそうとは言えません。私の経験では、国産有名メーカーの撮影用大容量リチウムバッテリーが期待するほど長持ちしなかったことや、逆に購入から8年ほど経過した海外製の安価なモバイルバッテリーが予想以上に容量を保っているといったケースもあり、アタリ・ハズレといった要素も少なからず含むように感じます。今回記載したUGREEN製のモバイルバッテリーの耐久性は、相応の期間使ってみないと分からないものの、私の使用頻度から考えると十分なように感じます。
 今回記載した「UGREEN モバイルバッテリー 20000mAh」のAmazon商品リンクはこちらです。

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